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デフサッカー男子日本代表監督 植松氏に聞く「デュアルキャリア」の実践。

2021.1.15

■プロフィール
植松 隼人(うえまつ はやと)
1982年 東京都生まれ
デフサッカー男子日本代表監督
2010年には選手としてデフフットサル日本代表に選ばれるなど活躍。
引退後、指導者の道を選び日本代表コーチを経て、
2017年デフサッカー男子日本代表監督に就任。現在に至る。

アスリートのセカンドキャリアを応援する「名蹴会セカチャレ」。

今回はデフサッカー男子日本代表監督というアスリートとしてキャリアと様々な職業のキャリアを両立させ「デュアルキャリア」を実践している植松さんにお話しを伺いました。

※デュアルキャリアとは・・・
アスリートとしての競技活動と社会人として働くこと両方をどちらも主として並行して取り組むキャリアのあり方。新しいアスリートのキャリアの選択肢として近年、注目を集めている。

デフリンピックの悔しさから日本代表監督へ

−−−−−植松さんご自身のことをお聞きする前に、「デフサッカー」という競技について教えていただけますか。

デフとは英語の「deaf」。「聞こえない、聞こえにくい」という意味です。デフサッカーとは、その言葉どおり聴覚障がい者のサッカー。
競技中は補聴器を外すことが義務付けられていることから「音のないサッカー」の愛称で呼ばれています。
ピッチ上ではアイコンタクトや手話でコミュニケーションを取っています。
基本的なルールは通常のサッカーと同じ。

デフフットサルも競技として確立されていて、デフサッカー、デフフットサル合わせて国内の競技人口は300名程度。
国際大会としてはオリンピックにあたるデフリンピックとワールドカップがあります。私自身もデフサッカーの選手で、デフフットサル日本代表に選ばれた経験もあります。

−−−−−そして今は、日本代表の監督をやってらっしゃるのですね?

そうですね。

もともと2014年から約4年間、デフサッカーおよびデフフットサル日本代表コーチを兼務し、コーチ契約満了の後デフサッカー男子日本代表監督としてチャレンジしたいという想いで志願したのが始まりです。

直接的なきっかけは2017年トルコで開催された夏季デフリンピックで予選敗退となった悔しさ。
それが代表監督にチャレンジしてみたいという大きな原動力となりましたね。

現在は代表監督として代表チームの統括はもちろんのこと合宿中のトレーニング指導や分析などを担当。

特に大切にしているのは選手との対話ですね。欠かさずに心掛けています。

日本代表監督 兼 サービス介助士アドバイザー 兼 講師

−−−−−他にも複数のお仕事をされているとお聞きしています。

代表監督以外にも日進工具株式会社に勤める傍らサインフットボールしながわスクール運営やサービス介助士アドバイザー、日本財団あすチャレアカデミー講師、公立高校非常勤による手話講師といった活動をしています。

日進工具株式会社は日本ろう者サッカー協会のスペシャルスポンサーでもあり、日本代表監督業務を主としてアスリート雇用をして頂いています。

サインフットボールしながわは自分の少年時代からの経験をもとに2016年から自ら立ち上げ、毎週日曜に聴こえない子と聴こえる子と一緒に手話べり(手話でのおしゃべり)する空間というコンセプトで活動しています。

サービス介助士アドバイザーとしては一般社団法人ケアフィット推進機構からの依頼により企業向けに聴覚障がい者当事者としてのお話する場を頂いていますね。

あすチャレアカデミーは東京パラリンピックを盛り上げるとともに共生社会とは何か?という主旨で企業や学生の皆さんにお話をする機会が多いです。

公立高校で毎年10月から1月まで週1の頻度で手話を選択した学生さんに体験授業をしています。

−−−−−デュアル(2重)どころかマルチキャリアな植松さんですが競技経験が仕事に活かされている点はありますか?

東京デフフットボールクラブが最初に指導現場に立ったクラブであり、監督をしたい人がいなかったことで選手という立場でありながらも監督志願しました。

志願した時の想いは今も変わらずサッカーを指導することはもちろんですが、1人1人の選手をしっかり見て接して選手の立場になって聞く姿勢は意識していました。

楽しいことも悔しいことも悩むことも一緒に共有ができるようにしていくことでチームワークに繋がっているというのが当時の経験から活かされているように感じています。

−−−−−逆に仕事の経験が競技に活きている点はありますか?

今の仕事柄、人前に立つ仕事が多いことから良い緊張感を持って挑むことができる強心臓が身に付いたなというのは感じている部分です。

またどのような言葉をかけたら皆さんが楽しく興味を持って傾けてくれるか、言葉の選び方や伝え方はより考えるようになりました。

伝わるコミュニケーションを意識している事が監督業にも活かされていると感じています。


デュアルキャリアを支えてくれているのは信頼できる仲間や家族

−−−−−植松さんご自身はデュアルキャリアを実践されていますが、同じような道を考えている方に一言アドバイスをいただけますでしょうか。

現在の男子サッカー代表メンバーの範囲で言えば社会人と学生が8:2の割合。社会人の中でもアスリート契約している選手もいれば、通常の社員として働いている選手もいます。

一昔前に比べれば比較的両立できている選手が増えてきた傾向にあります。とは言え競技と仕事を両立できることはなかなか大変なことですね。

私自身、自分の周りにいる家族や仕事仲間、友人と関わっている人達がいて成り立っているということが本質にあり、自分1人では限界を感じてしまうこともこれまでありました。

だからこそ、本当に信用できる仲間とは信頼を蓄積していかなければなりません。信頼とは未来を信じて期待できる仲間を見つけ、信用度を積み上げていくものだと思っています。

もし競技と仕事の両立を目指している事考えているのであれば是非意識してみてください。


子どもたちが10年後に活躍できる世界へ

−−−−−これからのビジョン

まず代表監督としては、2025年デフリンピックの日本誘致に関して国からも発表があったのでデフスポーツ界の底上げとなるように国全体を盛り上げていきたいと思います。

パラリンピックのようにデフリンピックにも国からの厚い支援と多くの企業に支援していただける環境をつくっていければと思いますね。

そしてさらにその先の話として、誰もが本気のスポーツに取り組めるような仕事環境であったり、障がい者という見方をなくし、1人1人の色があってお互いの良さを認め合える社会を作り出していきたいという願いが強いです。

私自身できる事としてサインフットボールしながわに在籍している今の子どもたちが10年後にはそれぞれ活躍できる人になってほしいと想い、たくさんの経験と体験を提供し続けていくことで自ら考えて行動できる人になってもらいたいと考えています。

そのためにもデフサッカー選手の企業への社員やインターンとしての紹介などの活動に注力をしたいと考えていますし、それこそ「名蹴会セカチャレ」さんにはお手伝いいただきたいですね。

−−−−−ありがとうございました。


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